2021年1月15日 ゲスト・尾藤イサオ~第2話~


【放送内容】


歌手・尾藤イサオのキャリアがスタートしたのは、人気バンド・ジャッキー吉川とブルーコメッツを擁する大橋プロからだった。ある日尾藤さんは、大橋社長に会うためにブルーコメッツが出演する渋谷のジャズ喫茶を訪れる。2バンド出演の休憩時間。最初に面談したのは、当時大橋プロの所属シンガーだった鹿内タカシだった。



「『何歌うんだ?』って言って、鹿内さんがギターで合わせてくれたんですよ。自分で一所懸命レコード聴いて憶えてはいるけれど、歌は全然自信がなかったんです。でも普通の高校生と違って曲芸で各地を回ったりなどしてきていますから。それで鹿内さんが大橋社長に『歌はともかく何だか面白いやつだ』と。だから鹿内さんにオーディション受けたみたいなことで」(尾藤イサオ)

その後大橋社長とも話をした尾藤さんは、当時の大卒の初任給を上回る月給15,000円で大橋プロの専属歌手として採用される。もちろんステージ衣裳他出費も大きいが、何よりステージでロックを歌う毎日の到来に、計り知れない喜びを感じたのだった。


「プレスリーから音楽の道に入られたというのはわかるんですが、元は伝統芸能のおうちの出じゃないですか。(周囲の)反対とかはなかったんですか?」(東郷昌和)

話は少し遡る。鏡味小鉄師匠の内弟子時代、寄席の外に米軍キャンプの慰問に行くことも多かったのだそう。寄席や名人会などでは当然三味線・太鼓などの和楽器が伴奏につくが、米軍キャンプのステージでは、小鉄師匠はキャンプのハウスバンドが演奏する「マンボNo.5」などの洋楽に合わせて演目を披露していたという。そして弟子の鏡味鉄太郎こと尾藤さんも、紋付袴ではなくストライプの衣裳で<ロカビリー曲芸>と称し師匠に追従していた。


やがて尾藤さんは5年プラス1年の奉公期間を務め上げ、小鉄師匠のもとへ挨拶に向かう。

「長い間奉公させていただきありがとうございます。僕はこれでやめさせていただきます」

「いいんだよお前、今日で年(年季奉公)が明けたんだから。明日から独立して、お金もちゃんと稼げるように…」

「いや、そうじゃなくて。曲芸をやめさせていただきます」

さすがの小鉄師匠も、その一言に驚いた。

「お前……へ?曲芸をやめるって。それじゃどうするんだ?曲芸をやめて何をするんだ??」

「僕、プレスリーみたいに歌を歌って、明日からやりたいんです」

「お前は本当の不良になりたいのか?!」



「当時はロック、ましてやプレスリーの髪型、ジーンズの上下なんていうのは、アメリカでは州によっては囚人服がジーンズのところがあるんですよね。そういうのを見ているから、師匠は『お前は本当の不良になりたいのか』と言ったんです」(尾藤イサオ)

「アメリカでは(当時)プレスリーは否定、ですもん。『あんな男が腰を振って』ですから。だからそういうお師匠さんだったら『お前は!』って言いますよね」(東郷昌和)

年季は明けたものの曲芸師・鏡味鉄太郎としては破門扱いとなり、当座は時給70円のアルバイト生活で食い繋ぎながら歌手へのチャンスを伺うこととなる。そして1年後に大橋プロを紹介され、上述の通り念願の歌手デビューに至る。わずか2ヶ月後にはジャズ喫茶や、「スパークショー」などのテレビ番組への出演が続いていた。

そして、当時ロカビリー歌手にとっては夢の桧舞台だった<日劇ウエスタン・カーニバル>。尾藤さんは昭和38年から6年間連続出演を果たす。


番組最後にお聴きいただいたのは、1964年のウエスタン・カーニバル出演時に尾藤さんが歌ったシンキング・オブ・ユー・ベイビー(デイブ・クラーク・ファイブ)。この曲は尾藤さんがリリースしたシングル盤のB面曲だった。そのA面は、現在でも「尾藤イサオの代表曲」の一つとして知られる1曲だった。




【エピソード】


「僕もビートルズもそうだったように、皆プレスリーの影響を受けて今日に至るんですが、プレスリーがいなかったら僕は今も曲芸で寄席の舞台に立っていたかも知れない」(尾藤イサオ)

「あの当時はプレスリー→ビートルズの流れがすごかった。僕もそうだけど、その流れの中で生きてきたから今音楽をやっているという人がほとんどですよ」(東郷昌和)

「もちろん当時すでに進駐軍が持ち込んだフランク・シナトラやハリー・ベラフォンテはいましたが、ロックンロールが世界を席捲し、エルヴィスの影響、ビートルズの影響を受けた人は世界中に沢山いるんですよね」(尾藤イサオ)

「シナトラやベラフォンテ、あとナット・キング・コールはスタンダードジャズですが、そこに現れたロックンロールはまさに革命なんです。当時ブルースが出てきて、アメリカにはカントリー(ミュージック)があって、その境目からロックンロールが出て来た……という説もありますけどね」(東郷昌和)





【使用楽曲】

♪ワーク・ソング(尾藤イサオ+ブルーコメッツ)

♪ビーバップ・ア・ルーラ(鹿内タカシ)

♪マンボNo.5(ペレス・プラード楽団)

♪ルイジアナ・ママ・ツイスト(スマイリー小原とスカイライナーズ)

♪シンキング・オブ・ユー・ベイビー(デイブ・クラーク・ファイブ)
















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