【放送内容】
＊オープニングでお聴きいただいたのは、《ル・クプル》の1stアルバム「hide & seek」よりジャックスのカヴァー「時計をとめて」。このアルバムは1994年に発売され、「ひだまりの詩」でル・クプルがブレイクするのはその3年後だった。自分たちも周囲もイメージすることのなかった大ヒット。藤田恵美は当時について「自分は同じ場所にいるつもりでしたが、周囲が変わって……」と述懐する。ゲリラライブなども含む地道な音楽活動に加え、テレビ出演や取材が入ってくる。時間と締め切りに追われ、毎日の仕事をこなすのが精いっぱいの日々だった。
＊2005年にル・クプルは＜活動休止＞するが、それ以前から藤田さんは、前回の放送で話が及んだ「camomile（カモミール）」シリーズのリリースをはじめソロシンガーとして安定した活動を継続、今に至る。2012年にはリリー・フランキーがプロデュースと全曲の作詞を担当したオリジナルアルバム「花束と猫」で日本レコード大賞優秀アルバム賞を受賞している。
＊2曲目にお聴きいただいた「デスペラード（ならず者）」は、「camomile」シリーズから更に選ばれた曲で構成された「camomile Best Audio」の中の1曲。このアルバムは全曲英語での歌唱ということもあり日本以上に香港・台湾をはじめとするアジア圏で好評を博し、香港のHMVで5週連続売上1位を記録した。
「全くわからない人たちが海を越えて、自然に自分の歌を聴いてくれるというのがある意味理想でした」（藤田恵美）
＊カヴァー作品は洋楽のみではない。日本語曲のカヴァーアルバム1作目（藤田恵美名義）「ココロの食卓」は古今の日本の歌謡曲・J-POPを集めたもの。中には両親から習い覚えた歌もあり、タイトルの「食卓」という言葉は早くに父母との別れを経験した藤田さんの＜家族への愛＞のメタファーでもある。
＊「ココロの食卓」から12年振りの日本語曲カヴァー集となる最新作「ココロの時間」。このアルバムは今年6月にリリースされた。レコーディングは2020年の春。そう、まさに＜緊急事態宣言＞下での制作であった。
「『明日からこちらのスタジオ使えません』とか、ホールを借りての録音もあったのですが、そこも『使えない』と言われて、さあどうしよう、あと一寸なのに……と」（藤田恵美）
何とか伝手を使い、協力者も現れ無事制作完了。コロナ禍による様々な制限、そこから生じるココロの不安や閉塞感が人々の間に広まる中に＜癒しの歌声＞を投じるような発売タイミングとなった。
＊アルバム「ココロの時間」は男性ヴォーカル曲のカバーのみで構成されている。当初はそれを意図したわけではなかったが、候補曲のデモテープを作り採用曲を選ぶ中で、藤田さん自身が面白みを感じた曲はほとんどが男性シンガーの持ち歌だったのだそう。
今回の放送では「君をのせて」（オリジナル/沢田研二）をご紹介したが、アルバム1曲目の「ケンとメリー」オリジナルシンガーの東郷さんとしては
「男声と女声とでは違った形で聴こえて来て、自分が書いた訳じゃないんだけど（笑）ああ、いいなぁ……って思いますね」（東郷昌和）
＊近年の藤田さんはソロ活動に加え、菅原進（ビリーバンバン）、岩沢幸矢（ブレッド＆バター）と共に《LOVE × 3》を結成。このユニット名だが
「幸矢さんが『愛だよ、愛だよ』っていつも言うんです。『愛を歌おうよ！』って。それでこの名前になったんです」（藤田恵美）
放送日現在はまだコロナ禍のため活動再開にも慎重な姿勢を取っているところだが、いずれ東郷さんのユニット《G3》とコラボでのライブも開催するかも知れない。その時には愛に満ちた3人のハーモニーを堪能できると期待せずにはいられない。
【エピソード】
＊番組内でナビゲーター・東郷昌和が藤田さんを「元・ル・クプルの……」と紹介したが、実は「元・」ではないことがトークの中で藤田さんから明かされた。またいつの日かメンバー揃って演る機会が巡って来た時のために、《ル・クプル》の名は残したまま「活動休止」という形を取っているのだそう。実際この15年の「活動休止」中に1度、あるテレビ番組で二人で「ひだまりの詩」を演奏している。ちなみにBUZZは3回ほど解散、東郷さん曰く「また聴きたいという声にお応えして……」といいながら復活を繰り返していたのだとか。
＊前述の「デスペラード」、オリジナルはイーグルスだが藤田さん自身が聴き親しんだのはカーペンターズによるカヴァー。長く離れて暮し、藤田さんの二十歳を待たずに早逝した母の遺品のレコードに収録されていたという。番組ではこの1曲に寄せる想いについて、藤田さん本人のメッセージを曲とともに紹介した。
【使用楽曲】
♪時計をとめて（ル・クプル）オリジナル/ジャックス（1968年）
♪デスぺラード（ならず者）（藤田恵美）オリジナル/イーグルス（1973年）
♪酒と泪と男と女（藤田恵美）オリジナル/河島英五（1976年）
♪君をのせて（藤田恵美）オリジナル/沢田研二（1971年）
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